2006年2月16日
広島県知事 藤田 雄山 殿
在ブラジル・在アメリカ被爆者裁判を支援する会
代表世話人
田 村 和 之
2月8日広島高裁判決に対する上告決定に抗議し、その撤回を求めます。
本日、私たちの上告しないようにという強い要望(2月10日提出)にもかかわらず、2月8日の在ブラジル被爆者裁判広島高裁判決に対して、広島県は「上訴せざるを得ないと判断し」た(以下では「上告決定」という)と発表しました。
発表されたところによれば、上告決定の理由は、このたびの広島高裁判決と2003年2月27日福岡高裁判決(いろゆる廣瀬方人裁判)とで判断に食い違いがあるので、あらためて上級審の判断を求める、ということです。
しかし、在ブラジル被爆者裁判と廣瀬方人裁判とでは、事案に大きな違いがあります。廣瀬氏は、「健康管理手当の支給関係においては、長崎市民としての実態があったものと認めることも十分可能であった」(福岡高裁判決)事案あり、このことを重視して同高裁は、時効の主張が「信義則にもとると評価できる特段の事情があるとまでは判断し難い」と判示したのでした。
これに対して、在ブラジル被爆者裁判は、文字どおりの在外被爆者裁判であり、在ブラジル被爆者が「権利を行使することができなかったのは、被控訴人(広島県)が支給義務があるのに、402号通達に従って本件健康管理手当を支給しなかったためであり、被控訴人が控訴人らの権利行使を妨げたのと同視することができる」という事案です。このように事案が大きく異なるのですから、司法判断が異なるのは当然のことです。
それにもかかわらず、司法判断が統一されていないと強弁して上告を決定したのは、長期間にわたり在外被爆者の権利を否定してきた自らの責任を隠蔽するだけでなく、長い間原爆二法・被爆者援護法の適用外とされて放置され、いま人生の最終盤にさしかかりつつある在外被爆者の援護を、取り返しのつかないほど先に送ってしまうことを意味します。広島県は上告して、いたずらに裁判の長期化をはかるのでなく、すみやかに広島高裁判決に従って未払いになっている手当を支払い、奪われた在外被爆者の権利を回復させるべきです。
以上の趣旨により、本日の上告決定の発表に抗議し、その撤回を求めます。 以上
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