第三次追加提訴 訴状
(2002年12月3日提訴)
訴 状
2002年12月3日
広島地方裁判所 民事部 御中
原告訴訟代理人 弁護士 足 立 修 一
同 弁護士 奥 野 修 士
同 弁護士 田 邊 尚
同 弁護士 中 丸 正 三
同 弁護士 二 國 則 昭
同 弁護士 藤 井 裕
同 弁護士 山 口 格 之
在ブラジル被爆者健康管理手当等請求事件
訴訟物の価額 金243万2530円
貼用印紙の額 金 1万9100円
予納郵券額 金 1万0170円
当 事 者 の 表 示
ブラジル連邦共和国サンパウロ州スザノ市○○
原 告 ※※
ブラジル連邦共和国サンパウロ州サンパウロ市○○
原 告 ※※
〒730-0004 広島市中区東白島町18番13号 東白島ビル201号
TEL 082-211-2441 FAX 082-211-3331
(送達場所)
原告訴訟代理人 弁護士 足 立 修 一
〒730-0012 広島市中区上八丁堀8−20 井上ビル3階
TEL 082-227-2411 FAX 082-227-6699
同 弁護士 二 國 則 昭
同 所
同 弁護士 中 丸 正 三
同 所
同 弁護士 奥 野 修 士
〒730-0014 広島市中区上幟町3番20号 なか島ビル3階
TEL 082-228-2458 FAX 082-227-8431
同 弁護士 山 口 格 之
〒730-0012 広島市中区上八丁堀4番28号 松田ハイツ204号
TEL 082-222-5361 FAX 082-222-5362
同 弁護士 田 邊 尚
〒730-0013 広島市中区八丁堀5番22号 メゾン京口門202号
同 弁護士 藤 井 裕
〒100-0013 東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
被 告 国
代表者法務大臣 森 山 眞 弓
〒730-8511 広島市中区基町10番52号 広島県庁
被 告 広 島 県
代表者知事 藤 田 雄 山
請 求 の 趣 旨
(原告堀岡貢関係)
1 原告※※と被告国との間で,原告※※が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年12月16日法律第117号)に定める被爆者健康手帳の交付をもって取得した被爆者援護法1条1号に定める被爆者たる地位にあること,および,同法に定める健康管理手当証書の交付をもって取得した健康管理手当受給権者たる地位にあることを確認する。
2 被告国及び被告広島県は,原告※※に対し,各自金195万1910円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(原告※※関係)
1 原告※※と被告国との間で,原告※※が原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年12月16日法律第117号)に定める被爆者健康手帳(手帳番号・549231−9)の交付をもって取得した被爆者援護法1条1号に定める被爆者たる地位にあること,および,同法に定める健康管理手当証書(記号番号・ひしけ198917)の交付をもって取得した健康管理手当受給権者たる地位にあることを確認する。
2 被告国及び被告広島県は,原告※※に対し,各自金48万0620円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済まで年5分の割合による金員並びに2002年12月以降2006年7月まで毎月末日限り金3万4330円を支払え。
(原告両名共通)
1 訴訟費用は被告らの負担とする。
2 仮執行宣言。
請 求 の 原 因
第1 本訴訟の概要
原告らは,いずれも1945年(昭和20年)8月に広島市で原子爆弾に被爆した者であり,戦後の日本政府の奨励により,ブラジル連邦共和国に移民として移住した者である。また,原告らはいずれも日本国籍を有している。
原告らは,ブラジルから故国である日本に帰国した際に,被爆者健康手帳の交付を受け,その後,健康管理手当の支給の申請を行い,その支給認定を受け,健康管理手当を受給していた。
ところが,原告らが日本からブラジルに帰国すると,被爆者健康手帳は失権の扱いとなり,また,健康管理手当の支給は打ち切られることになった。
この取扱いは1974年(昭和49年)7月22日になされた厚生省公衆衛生局長通達(衛発第402号,以下,402号通達という)により,当時の原爆特別措置法の行政解釈として,以後,28年間にわたり行われて来た。しかし,当時の原爆医療法・原爆特別措置法,あるいは,現行の被爆者援護法には,いずれも,被爆者として認定を受けたことに基づく権利が日本国から出国することにより消滅させられるという明文の規定は存在しない。
したがって,原告らは,被爆者として認定され,被爆者健康手帳の交付を受け,さらに,健康管理手当を受給しうることを確認されたにも関わらず,日本国を出国することにより,失権の取扱いをされる結果となるのは,前記402号通達に基づく行政実務に基づくものであるところ,この通達は,原爆医療法・原爆特別措置法・被爆者援護法に照らして違法である。
本訴訟では,原告らが本来支給されるべき健康管理手当の支払いを求めて提訴するものである。
第2 原告※※関係
一 原告※※が原子爆弾により被爆した事実
1 (略)
2 原告※※は1944年(昭和19年)4月頃から,当時,広島市吉島本町2丁目にあった水野精工所に工員として勤務していた。
3 原告※※は,1945年(昭和20年)8月6日の朝も,上記水野精工所に出勤し,精工所内で作業に携わっていたところ,午前8時15分頃,突然,強い閃光を感じた。原告※※は,その際,無意識に窓の方へ走り出したがその直後,今度は強烈な爆風を受け,頭上から瓦礫が降り落ちてきた。気がついてあたりを見回すと工場は全壊し,上空を見上げるとキノコ雲が立ち上っており,自らの体は血だらけとなっていた。
かくして,原告堀田貢は,爆心地から2.5キロメートルの地点において被爆した。
4 被爆後,原告※※は炭坑で働くなどしていたが,不況のため炭坑での仕事が減っていく中で,ブラジルへ渡航する労働者の募集があったため,1960年(昭和35年)12月から,妻,子供二人(当時5歳と2歳)および妻の弟とともにブラジルに渡った。ブラジルへ移住した後の生活は想像していたよりも大変苦しく,幾度か帰国することも考えたが,渡航費用が捻出できないことから,ブラジルで何とか仕事に励んでこれまで生活してきた。
二 被爆者健康手帳の取得及び健康管理手当認定
原告※※は,1994年(平成6年)5月17日,被爆者健康手帳の交付を受け,同年7月26日,循環器機能障害を認定されて健康管理手当証書の交付を受けた。
これにより,原告※※は,1994年6月から1999年(平成11年)5月まで健康管理手当を受給しうることとなった。
三 出国による健康管理手当の不支給
原告※※は,被爆者健康手帳の交付を受けた後,1994年(平成6年)6月18日ころ日本を出国しブラジルへ帰国したところ,前記402号通達のために,健康管理手当が失権の取扱いとなり,同年8月分から1999年(平成11年)5月分までの健康管理手当が支払われておらず、その不支給総額は別紙※※・計算書のとおり、合計金195万1910円が支払われないままとなっている。
第3 原告※※関係
一 原告※※が原子爆弾により被爆した事実
1 (略)
2 原告※※は亀山国民学校卒業後,實践女学校に通い,その後,当時,広島市祇園町にあった三菱機械の事務所に勤務していた。
3 原告※※は,1945年(昭和20年)8月6日の朝も,上記三菱機械の事務所に出勤し,事務所内で働いていたところ,午前8時15分頃,突然,強い閃光と大きな音を感じた。原告※※は咄嗟に机の下に隠れようとしたが,同時に事務所の天井が落ちて崩壊し,原告※※は割れた窓ガラスの破片により傷を負った。
かくして,原告※※は,爆心地に近接した地点において被爆した。
4 被爆後,原告※※は亡夫と婚姻し,まもなく子供を宿したが,医師から指導されて堕胎せざるを得なかった。
その後,1955年(昭和30年)9月22日,夫らとともにブラジルへ移住し,そこで農業等に従事したが,これまで様々な苦労を重ねてきた。
二 被爆者健康手帳の取得及び健康管理手当認定
原告※※は2001年(平成13年)7月30日,被爆者健康手帳の交付を受け(手帳番号・549231−9),同年8月7日に障害を認定され,健康管理手当証書(記号番号・ひしけ198917)の交付を受けた。これにより,原告は,2001年8月から2006年(平成18年)7月まで健康管理手当を受給しうることとなった。
三 出国による健康管理手当の不支給
原告※※は,被爆者健康手帳の交付を受けた後,2001年(平成13年)9月4日ころ日本を出国しブラジルへ帰国したところ,前記402号通達のために,健康管理手当が失権の取扱いとなり,2001年10月分から2002年(平成14年)11月分まで合計金48万0620円が支払われないままとなっている。
第4 違法な通達による手当の打ち切り
第1の「本訴訟の概要」でも述べたように,被告らは,被爆者援護法に法的根拠のない違法な通達(1974年7月22日衛発第402号厚生省公衆衛生局長通達)に基づく行政実務により,「日本国の領域を超えて居住地を移した被爆者には」,「健康管理手当は失権の取扱いになる」として,原告らが日本国から出国したことにより,違法に健康管理手当の支給を打ち切ってきた。
よって,被爆者援護法に照らすなら,被告らには,原告に対して,出国により不支給とした健康管理手当につき支払義務がある。
第5 結論
よって,原告らは,請求の趣旨に記載のとおりの判決を求めるため,本訴に及ぶ。
証拠方法
追って口頭弁論において提出する。
附属書類
1 訴訟委任状 2通
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