・3月24日から28日 サンパウロ。説明及び懇談会を実施。被爆者、被爆2世など、
30数名が参加。
・3月29日から4月1日 ロサンジェルス。説明及び懇談会を実施。被爆者、被爆2
世など40数名が参加。
・4月1日から4月4日 サンフランシスコ。説明及び懇談会を実施。被爆者、被爆2
世など20数名が参加。
1)現地で必要な医療を受けることができるようにしてほしいとの要望が強い。
2)ブラジル、アメリカともに私企業の医療保険への加入が基本であるが、高齢化した被
爆者は、加入を拒否されることがあり、また、加入できたとしても、十分な給付を受ける
ことのできる保険が著しく高額であることが多く、資力の乏しい者は、給付の不十分な低
い額の保険に入ることになるか、保険に加入できない。
3)アメリカのメディケア、メディケイトは十分なものとは言い難い。
アメリカでは65歳以上の高齢者については、メディケアという政府の運営する医療
保険制度が存在する。しかし、メディケアを利用したとき、通常、医師が行った医療に
ついての医療費の受領分が一般治療の場合の医療費に比べ約半分になるため、医
師からメディケアによる診療を拒否される場合がある。
メディケイト(収入の少ない者についての医療扶助に類する制度)については、メディケ
イトを受けることを恥と考える被爆者が多く、生活に困ってもなかなか受給しようとしな
い。また、メディケイトを利用すると、医師の受けとる医療費が少なくなるため、病院のた
らい回しのような状況が生まれている。
4)以上のようなことから、ブラジルおよびアメリカの被爆者はともに、被爆者援護法に
よる医療の給付、医療費の支給を強く要望している。また、援護法による手当が受給
できれば、高額な医療保険料または医療費の一部に充てることができると受けとめら
れている。
当初は期待が大きかったが、現在はさほど期待されていないように見受けられる。ないよりはましという感じで、派遣してもらうことに感謝はしているものの、満足感を与えるにはほど遠いようである。受診者数が少なくなってきていることは、その現れとみるべきである。
これまで、ある程度「元気な」被爆者が対象となってきたようである。本当に治療が必要な被爆者については、移動が困難であったりして、「帰国」または「渡日」できていない。「帰国または渡日」治療の「恩恵」を受けられる被爆者はごく一部の者に限定されているようである。したがって、従来の「帰国または渡日」治療については、感謝はされているが、他方である種の不公平感を与えているように見受けられる。
在韓被爆者の裁判や在ブラジルの森田さんの裁判への関心は高く、在外被爆者に残された手段は裁判しかないという意識が強い。
森田さんの提訴に続こうとする被爆者が名乗り出ている。この裁判への期待は、被爆者だけでなく、非被爆者の日本人、日系人にも強いと感じられた。
1)日本人、日系人の被爆者という意識が強い。そのためでもあるのか、日本政府
への期待感が強い。しかし、昨年12月の厚生労働省の打ち出した施策に関し
ては、日本政府に対して強い失望感を抱いているように見受けられた。
2)国内の被爆者と比べて、被差別意識を強く持っていると感じられた。
ブラジルの戦後移民の被爆者は、日本政府の奨励により移民したという事情が
あるため、これまで一貫して在外被爆者に援護施策を実施して来なかった日本
政府に対しては、「棄民」意識を強く持っていると感じられた。
アメリカの被爆者の間にも被差別意識は根強くある。
3)日本における被爆者に対する施策については、あまり知られていないようだ。
日本における被爆者予算が、29万人の被爆者に対して約1600億円である
ことを話すと、びっくりしている被爆者もいた。
「人道上の見地からは、その居住地によって援護の程度に差をみることは不合理である」という「在外被爆者に関する検討会」の各委員共通の認識を踏まえる。
この立場たち、被爆者に対する施策が、可能な限り内外において等しいものとなるようにする。
昨年12月10日の「在外被爆者に関する検討会」の報告書において、委員の間で一致をみたものは、在外被爆者に対して「何らかの施策を講ずべきである」ということのみであるが、施策を講じるためには、在外被爆者の実態を正確に把握することが不可欠である。
まず、郭貴勲裁判での大阪地裁判決、李康寧裁判での長崎地裁判決が国などに命じたことを、直ちに実行すべきである。すなわち、日本で被爆者健康手帳の交付を受けたときは、出国によって手帳を失権させず、また、各種の手当を受給しているときは、出国しても継続して受給できるようにする。
以上は、通達を改めるだけでできる。
北米・南米の被爆者は、飛行機による長時間の旅で日本に来ることが困難な状態になっている者が多い。被爆者健康手帳の交付、各種手当の申請手続は在外公館を通じて行うようにすべきである。
以上を行うためには、手続整備のための法改正が必要であろう。
何らかの形で、在外の被爆者が現地で医療の給付または援助を受けられるようにするべきである。その方法として、
@現地に指定医療機関等を設置し、被爆者援護法に基づく医療の給付等を行う。
A医療の給付等を現地の関係機関に委託して行う。
の2つが考えられる。@は検討すべき問題が多いので、差し当たりAを実現させることが考えられてよい(法改正なしで行うことも考えられる)。
以上