郭貴勲「被爆者援護法」裁判第3回口頭弁論 |
1999.3.12(金)16:00〜 大阪地裁806号法廷にて
今回の裁判では?
第2回口頭弁論で提出された、原告側の準備書面(一)および被告側の第一準備書面に対して、双方が反論なり釈明する準備書面を提出します。
また、前回の裁判で、被告が「孫振斗最高裁判決が我が国に現在もしない者に対しては同法の適用がないことを明きらかにした」と主張したのを受けて、裁判長も「孫振斗最高裁判決にある『わが国内に現在する者である限りは、その現在する理由等のいかんを問うことなく、広く同法の適用を認めて』というのを読めば、在外被爆者から行政相談を受けた場合、適用できないと返答することになると思うのだが」との発言がなされました。
裁判長も孫振斗裁判で何が争点となり、最高裁判決では何が判示されたのかを理解していないことが分かり、「これは大変!」と、原告側の準備書面(二)では、孫振斗最高裁判決の意義についても、力を入れて主張しました。
今回提出される双方の準備書面の内容は次ページのとおりです。
被告側の釈明は、結局は、「被爆者援護法の法解釈上、日本を出国すれば、当然、被爆者援護法の適用対象とならない」を繰り返すだけで、その根拠となる具体的な法律の条文を挙げることができないでいます。
また、被告側の求釈明も、また日本に来れば「被爆者」になれるのだからいいではないか、と言っているに等しく、郭貴勲さんが「なぜ、韓国に帰ると被爆者ではなくなるのか」と訴えている本裁判の核心をそらそうとするかのようなものです。
国から郭貴勲さんへの反論
【原告・準備書面(一)】被告への求釈明 (第2回で郭貴勲さんが出した書面) |
【被告・第二準備書面】原告への釈明 (第3回に国が出した郭貴勲さんへの反論) |
(1)「健康管理手当は法律上当然に支給を停止された」とするのは、いかなる法律によるものか
(2)健康管理手当の受給権者たる地位を喪失するのは、手帳取得により生じた被爆者たる地位を喪失した結果なのか (3)1974年の通達に言う「居住関係」や「居住地」および「現在地」の意味を明確にせよ (4)通達に言う「失権の取扱」と「死亡により失権する」(被爆者援護法では失権を定めたものは死亡の場合のみ)の意味は同一なのか (5)原告の出国をどうやって認識し、どういう行政内部の手続きを経て手当支給を打ち切るのか (6)「答弁書」に言う「支給の停止」の意味はなにか。「停止」というなら支給再開もあるのか (7)被爆者援護法では、「手帳の返還」が定められているのは「被爆者が死亡したとき」のみだが、原告の手帳を出国と同時に「無効」とした根拠を明きらかにせよ。また「無効」とされた手帳は返還しなければならないのか |
(1)被爆者援護法は、我が国の領域内に居住も現在もしていない被爆者に対しては適用されないと解釈されるから
(2)原告が被爆者援護法一条で定義された「被爆者」の地位を喪失したため (3)「居住地」は日本国内において住民票や外国人登録証を有する地域。「現在地」は日本国内において現存する地域。「居住関係」は「居住地」及び「現在地」を包含 (4)失権に至る原因において明きらかに異なる。通達の「失権の取扱」とは、国外に居住地を移した者には被爆者援護法の適当がないことを確認的に明きらかにしたもの (5)原告の要望書や新聞記事で知った。出国により当然に手当受給権者の地位を喪失したのであり、援護法上も出国に係る事務取扱は何ら規定がなく、「失権の取扱」という行政処分は存在しない (6)手当受給権者の地位を当然に喪失したために停止。日本に来てまた申請すれば支給される (7)出国により被爆者援護法上の「被爆者」たる地位を喪失し、被爆者援護法は適用されないので、手帳は効力がない。出国に際する返還義務は援護法に規定がないので、返還義務はない |
【原告への求釈明】再入国のつど、手帳を取得しているのか?しているのなら、「被爆者」たる地位を有することを争う意思はないこととなる |
郭貴勲さんから国への反論
【被告・第一準備書面】 在外被爆者に被爆者援護法の適用がないとする根拠 (第2回に国が出した書面) |
【原告・準備書面(二)】 被爆者援護法は在外被爆者にも適用されるべき法律である
(第3回に郭貴勲さんが出した国への反論) |
(1)被爆者援護法の構造 我が国の領域内に居住も現存もしていない被爆者に対する各種給付(医療費や手当など)の方法や各種給付を受けるための手続きを定めた規定は、まったく設けられていない。 (2)立法者意思 被爆者援護法は、国の戦争責任を肯定するものではないこと及び我が国に居住も現存もしていない者に対して適用されないことが、その制定時の国会審議において明きらかにされた上で可決・成立したものであるので、同法は国外に居住する者に適用されない。 (3)被爆者援護法の性質 被爆者援護法は社会保障法の一種として立法され、税負担に依拠しているので、我が国に居住も現存もしていない外国人には、明文の規定がない以上、適用されず、たとえ同法が国家補償的性格を有していたとしても国外居住の外国人に適用する規定がない限り適用できない (4)1978年の孫振斗最高裁判決は「原爆医療法」が社会保障立法の性格をも有することを判示した (5)1974年の通達は被爆者援護法の解釈を明記したもので、これに基づく手当の打ち切りには合理性があり、「不合理な差別」を禁じた「憲法14条」「国際人権規約B規約に違反する行為ではない |
第一 援護法制定の経緯と性格=援護法は国家補償法である 一 原爆二法は国家補償法的性格を有す (1医療法制定まで/2特措法制定まで/日本の戦争遂行が被爆をもたらした/法の内容が国家補償法的性格を示している 二 孫振斗判決の意義 (1事案の概要と争点/2最高裁は法の国家補償的配慮を認定/3最高裁は現在しない者の適用を否定せず) 三 援護法は国家法的性格を進めた (1援護法制定の経緯/2援護法の内容) 第二 援護法の構造=援護法は出国による「失権」を予定していない 一 援護法は全ての被爆者への適用を予定 二 出国による「失権」の規定はない 三 援護法の構造に関する被告主張の誤り (1被告主張/2援護法2条は権利得喪の要件を定めるものではない/3戦傷病者戦没者遺族等援護法は米施政下の沖縄・海外在住者に適用された) 四 「立法者意思論」批判 (1被告のいう立法者意思/2立法者意思は法解釈を拘束しない/3立法者の主観的意図は参考資料に過ぎない/4被告ら主張の無内容) 五 被告国・厚生省は在韓被爆者排除に固執してきた (1在韓被爆者に対する不合理・恣意的差別的な行政の歴史/2「402通達」は違法/3被告らは在韓被爆者へのゆえなき差別を固定・拡大しようとしてる) |