在外被爆者に関する検討会報告書の概要
平成13年12月10日
1、共通の認識
人道上の見地からは、その現在の居住地によって援護の程度に差をみることは不合理であるというのが各委員共通の考えである。よって、この際以下に述べる考え方を参考として、何らかの施策を講ずべきである。
2、在外被爆者に対して援護施策を講じる場合、法律上の根拠となり得る考え方
(1) 被爆者援護旛策は、法の「国家補償的性格」を根拠とする考え方、また、「特殊の被害」に着目した社会保障制度と解する考え方があるが、いずれの場合も、現行法に反映させ、在外被爆者に法を適用する根拠とすることは難しい。このため、人道上の見地から何らかの施策を講ずべきである。
(2)医療体制等の異なる国々に居住する人々に全く同様に本法を適用することは困難であり、適用しようとする場合には、そのための特別の規定を設けることが必要となる。現行の制度では、国外退去時の手続規定でさえ規定されていないなど在外被爆者の存在が全く予定されておらず、何らかの規定整備が必要である。
3.具体的に行うべき施策に関する検討
(1)緊急の課題として、@在外被爆者が渡日して、必要な原爆医療を受けられるような条件整備、Aそのための渡日前の受入れの準備、滞在中の日常生活支援、離日後のフォローアップ等の仕組みの整備、B原爆医療に関する人材養成や人材派遣等の国際交流(協力)等が必要である。なお、金銭給付を医療給付等と無関係に支給することは、制度の趣旨から考えて不適切であるとの考え方も提案される一方、「基金」のような制度により何らかの金銭給付を行う仕組みも提案された。
(2)これらの施策については、特別立法や被爆者援護法一部改正など。法令上の裏付けが必要ではないかとの意見や、法令に基づかずに実施できる施策は速やかに実現すべきとの意見があった。さらに、在外被爆者に対する被爆者健康手帳の取扱いの明確かが必要との考えが示された。
4.国、県市、民間団体等が果たすべき役割分担に関する検討
(1)在外被爆者にとって、被爆者健康手帳の発行が最も重要であり、これが実施可能な方法で行われるように、国、県市等の役割分担を考えるべきである。なお、国外において被爆者健康手帳を発行することは、今後の課題である、
(2)県市の実施する在外被爆者援護施策を国が支援し拡充することが期待される。
(3)各国の実情に応じ金銭給付を行う場合には、民間団体に委託して行わせる方法も考えられる。一方、適正な事業実施のために、県市による指導・調整は不可欠。
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