在外居住被爆者に対する健康管理手当の支給打切りに反対する会長声明
本年6月1日,大阪地方裁判所は, 韓国人被爆者が原告となり,
被爆者援護法上の被爆者たる地位の確認と健康管理手当の支給を求めた裁判でその請求を認める判決を言い渡しました。
この訴訟は, 1945年(昭和20年)8月6日に広島市で被爆した原告が,1998年(平成10年)5月に来日し,
被爆者健康手帳の交付を大阪府知事から受け,日本で入院治療を受けて,
健康管理手当を受給していたところ,同年7月5日に日本を出国した事を理由として,
同年8月分からの健康管理手当の支給を打ち切られたことを不当として提起されたものです。
この取扱いは, 法律の規定に基づくものではなく,1974年(昭和49年)7月22日に,
厚生省公衆衛生局長が出した通達(衛発第402
号)に基づいて行われてきました。 この通達は,日本国の領域を越えて居住地を移した被爆者には原爆医療法(当時)を適用せず,
健康管理手当の受給権は失権の取扱いをするように定め,
その結果, 一旦取得した健康管理手当も日本国外に居住している限り受給できないこととなりました。
この通達は, 1994年(平成6年)現行の被爆者援護法が制定された時も変更されず,
現在に至っています。
この点について, 大阪地裁判決は, 「被爆者援護法は,
被爆者が今なお置かれている悲惨な実情に鑑み,
人道的見地から被爆者の救済を図ることを目的としたものなのである。」,「日本に居住又は現在することが『被爆者』たる地位の効力存続要件であるという解釈は,
その人道的見地に反する結果を招来するものであって,同法の根本的な趣旨目的に相反するものといわざるを得ないのである。」,「かかる解釈に基づく運用は,
日本に居住している者と日本に現在しかしていない者との間に,
容易に説明しがたい差別を生じさせることになるから,
憲法14条に反するおそれもある」と述べ,失権の取扱いを不当とする判断を示しました。
このような判断は, 1996年(平成8年)以来,平和推進委員会を設置し,平和・核兵器廃絶に関する調査・研究をするとともに被爆者の人権を擁護し救済する活動を行ってきた被爆地広島の弁護士会として積極的に評価できるものです。
そこで, 被爆者健康手帳の交付を受けたにもかかわらず,
国外に居住した事を理由として健康管理手当の支給をしない運用は,
被爆者援護法の趣旨に反するものと考え, 政府に対し,控訴することなく判決に従い,
これまでの運用を改めて, 国外居住被爆者への手当の支給を一刻も早く実現されることを強く要望するものです。
2001年(平成13年)6月11日
広島弁護士会
会 長 二 國 則 昭
執行先
内閣総理大臣 小泉純一郎 殿
厚生労働大臣 坂口 力 殿
法務大臣 森山 真弓 殿
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