李康寧裁判第3回口頭弁論報告

「バカも休み休みいえ」
〜詭弁を弄する国や長崎市の主張に厳しい反論〜

 一二月七日(火)午後一時一○分、長崎地方裁判所での第三回李康寧裁判では、被告・国および長崎市の主張に対する当方の反論書(第一準備書面)が出され、本格的な論戦がはじまった。広島からの支援者を加えて多数の傍聴により口頭弁論が行われた。

 「被爆者特別措置法の適用範囲は、特段に規定のない限り、我が国の主権のおよぶ範囲である」との被告の主張に対し、「国内法に特段の規定があれば他国に統治権を及ぼすことができるのか」というわたしたちの反論がなされた。「斉藤最高裁判事の弁を借用すれば」との注釈つきながら「バカも休み休みいえ」といった厳しい指摘が続いている。

 被告長崎市らは「被爆者特措法の基本性格は社会保障法である」と断言しているが、長崎市は平成十一年七月発行の「原爆被爆者対策事業概要」において、「原爆被爆者対策の基本理念」として次のように述べている。

「従来国のとってきた原爆被爆者対策は、原爆被爆という特殊性の強い戦争被害に着目した一種の戦争損害救済制度と解するべきであり、これを単なる社会保障制度と考えるのは適当でない。国家補償の見地に立って被害の実態に即応する適切妥当な措置対策を講ずるべきものと考える」としている。明らかに李裁判における主張と異なるのである。わたしたちはこれを「長崎市と長崎市長の変節」として問いただした。

 日本政府は「国の責任」を明確化した「被爆者援護法」が制定された後も「日本国の領域を越えて居住区を移した被爆者には同法の適用がないものと解される」との見解をかえていない。従って、原告は被爆者手帳の交付を受けているにもかかわらず医療費の支給や各種手当の支給を受ける権利の行使を妨げられている。滞在中に「被爆者援護法」に基づく被爆者手帳の受給を申請し、認められても、日本出国と同時にその支給は打ち切られる。厚生省は「通達」という法的拘束力をもたない処置により在韓被爆者をはじめとする、在外被爆者から「被爆者援護法」に基づく諸権利を奪っている。

 今回の準備書面でわたしたちは被告・国及び長崎市に対し厳しい指摘を行った。次回は、わたしたちの反撃にたいし、被告側のさらなる反論がなされることになる。わたしたちの反論に答えるべく被告側は相当の準備のための「時間」を要求してきた。そのため、次回、第四回口頭弁論はご三月八日、午後一時一○分となった。当方は、今後、在外被爆者(アメリカ、ブラジル)や研究者の証人申請をおこなっていく予定である。
 裁判は裁判所だけでたたかうものではないことを肝に銘じて、今後のたたかいを進めていきたい。さらなるご支援をお願いしたい。

  (韓国の原爆被害者を救援する市民の会会報「早く援護を!」110号より)


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