訴 状
2001年9月11日
長崎地方裁判所 民事部 御中
原告訴訟代理人弁護士
龍 田 紘一朗
〒○○ 長崎市○○
原告 廣 瀬 方 人
〒854-0062 長崎県諫早市小船越町617番地11
諫早総合法律事務所(送達場所)
上記訴訟代理人弁護士 龍 田 紘一朗
同 小 林 清 隆
電話 0957-24-1187
FAX 0957 24-5257
被 告 別紙被告目録記載のとおり
健康管理手当支給等請求事件
訴訟物の価格 950,000円
貼用印紙の額 8,200円
請求の趣旨
一 原告と被告らとの間で,原告が原子爆弾被爆者の医療等に関する法に定める被爆者健康手帳の昭和32年6月14日付申請に係る交付をもって取得した被爆者たる地位は,原告の平成6年8月25日付日本出国によって消失していないことを確認する。
二 被告らは原告に対し,各自金33万2,250円とこれに対する平成7年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 原告と被告らとの間で、原告が原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律に基いて,平成7年9月から平成10年6月まで支払いを受けた健康管理手当合計金114万0,020円は被告らに返還する義務がないことを確認する。
四 被告長崎市は原告に対し、金60万円を支払え。
との判決並びに仮執行の宜言を求める。
請求の趣旨
一 原告の被爆
1 原告は昭和5年3月6日に生れ,原子爆弾投下時,長崎市桜馬場町29番地に住居し、旧制長崎中学校4年生として学徒動員され,三菱重工業長崎造船所造機製作部(ト)工場事務所で勤労奉仕させられていた。長崎市小菅町内の勝廊寺にエ場事務所が設けられていた。原告はそこで作業中ものすごい閃光に襲われ,咄嗟に立ち上がったら目がくらみ,床に倒れ伏し,そこに引き続く猛烈な爆風が襲来してガラス窓を破砕飛散させ、大小無数のガラス破片などが原告の上にふりそそいできた。このようにして,原告は被爆し、身体にも無数の裂傷を負った。
2 数日をへて,学校当局から伊良林小学校に出勤を命じられ 地獄絵図さながらに,無惨な姿をした被爆負傷者群の救護、死体処理作業に従事させられるなどし、長い期間放射能に曝露された。
ニ 原告の勤務歴、出入国歴
1 昭和29年4月から県立高校教師となった。
2 昭和32年被爆者健康手帳を取得した。
3 昭和48年運動機能障害により、健康管理手当を受給するようになった。
4 平成元年3月高校を退職し、4月から総科大学教養部教官となり、平成5年3月退職した。それから,1年間、琴海高校の常勤講師をしながら、日本語教師となる勉強をした。
5 平成6年8月、中国ハルピン市のハルピン工程大学英語学部日本語学科に日本語教官として赴任することになつた。8月20日長崎市住民野課に転出届をし、8月25日出国し,沈陽市の日本領事館に転入届をした。長崎市内の自宅は帰国にそなえて保持した。
6 平成7年7月25日帰薗し,その旨長崎市に転入届出をし,翌2月23日転出をし、同日出国した。
7 平成7年7月10日帰国し、12日長崎市に転入届出をした。
8 平成7年8月,ハルピン理工大学日本語学部教官に転任することになり,8月23日に日本を出国し、赴任した。在職中、平成9年1月17∃に帰省し、2月21日出国、帰任した。そして、ハルピン理工大学の任期を終了したので、平成10年7月16日帰国し,現在に至る。
三.出国、移住による健康管理手当の不支給
1 被告等は、原告に対し、平成6年9月支給分から平成7年6月支給分までの健康管理手当10か月分を支払っていない。手当月額は平成6年9月支給分が3万1,860円,10月からが3万8,300円,平成7年4月からが3万3,
530円,不支給合計が33万2,250円となる。
2 この期間は原告が中国に出国している期間と日本に帰住している期間を含む。
四 出国期間中の健康管理手当受給
1 原告はハルピン理工大学日本語学部教官となり,平成7年8月23日に日本を出国し、任期を終了して平成10年7月16日帰国した。
2 右期間中,健康管理手当月顛3万3,530円、合計114万0,020円の支給を受けた。
五 被告らとの関係
1 被告長崎市長は 被告長崎市の代表者であると共に、被告国の機関委任事務として、被爆者援護事業を管掌、処理をした。
2 被告長崎市は,前項の職務執行に当る被告長崎市長の給与を支払い,所要の経費を負担する。
3 被告三者いずれもが各自、原告に対しいわゆる原爆特措法、被爆者援護法に基づき健康管理手当を支払う義務を負う。
4 ところが,被告らは、日本国の領域を越えて居住地を移した者については手当受給権が失権することを理由に,平成6年9月から平成7年6月までは健康管理手当を原告に支払わず,また,出国期間中について支払った分は過誤支払いとして返還を求める態度をとっている。
六.被告長崎市の賠償責任
1 責任原因
(1)被告最崎市住民課は,原告が平成6年8月20日転出届をしたことを故なく原爆被爆対策部援護課に秘密漏洩した。
(2)被爆者は,被爆者法令上,長崎市外に住所を移した時は住民登録とは全く独立別個に健康手帳を新住所の役場などに提示して、住所変更手続を行うことを義務付けられている。ということは.住民登録事務部門上の転出等の守秘義務事実を被爆者対策事務部門に対しても漏洩してはならないことを意味する。
(3)被告長崎市住民課が原爆被爆対策部援護課に対して行った転出届提出事実の秘密漏洩は、権力を濫用用し,原告のプライバシーを重大かつ組織的に侵犯したことに帰し,不法行為となる。
2 損害
これによって、原告はプライバシーを侵害され,かつ,知らない間に健康管理手当を打切られる不当な取扱いをされ,精神的な損害を被った。
(1)慰謝料 50万円
(2)弁護士費用 10万円
証拠方法
1 甲1号証 被爆者健康手帳
付属書類
1 訴状副本 3通
2 甲1号証(写し) 正本1通 副本3通
3 訴訟委任状 1通
(別紙)
被告目録
〒100-0013 東京都千代田区霞ヶ関1丁目1番1号
〒850-0033 長崎市万才町8番16号長崎地方法務局(送達場所)
被 告 国
代表者法務大臣 森山真弓
〒850-0031 長崎市桜町2番22号
被 告 長崎市
代表者市長 伊藤一長
〒850-0031 長崎市桜町2番22号
被 告 長崎市町 伊藤一長
ページ管理者よりお詫び:
裁判訴状の転記・アップロードの際に、一部間違いがありましたのでお詫びして、訂正のお知らせをします。
(2002年1月13日)
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