2001年8月31日
要 請 書
広島市長
秋 葉 忠 利 様
韓国の原爆被害者を救援する市民の会
連絡先 広島市安芸区船越2−35−4
豊永恵三郎方 電話082-882-0766
原告郭貴勲訴訟代理人弁護団
弁護士 足 立 修 一
厚生労働大臣の諮問委員会に出席されるに当たっての
要望について
1 在外被爆者で被爆者健康手帳を取得した者に対しては,日本に在住する被爆者と同様の援護措置を行うべきことを原則とするような議論となるようように配慮していただきたいと思います。
広島で被爆した被爆者は,被爆をしたという事実によって被爆者となるのであり,被爆者健康手帳の交付は,被爆者としての権利(医療,手当)の行使を容易ならしめるためのものです。いったん被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者について,法律の明文の規定ない「日本国からの出国」により,その権利を奪われることを正当化できないとして,1974年に出されたいわゆる402号通達を違法なものと判断した郭貴勲大阪地裁判決(2001年6月1日)の判断を基本をする議論をしていただきたいと考えています。
大阪地裁判決では,指摘されていませんが,402号通達の出された時期は,後から振り返ってみると,当時の韓国原爆被害者協会の会長であった辛泳洙さんに被爆者健康手帳が交付されることが確実となっていた時点で出されたものです。その意味で,この通達は,在外被爆者の多くの部分を占めている韓国人被爆者の権利を奪おうとしているものとして理解されうることに留意していただきたいと思います。
2 最高裁判決の被爆者援護立法についての理解を前提に議論が進められるように配慮されたいと思います。
孫振斗最高裁判決(1978年3月30日)は,原爆医療法が人道目的の法律であり,国籍条項もなく,国家補償的な配慮を有する特殊な立法であるとして,この国に適法な居住関係のない密入国をした韓国人被爆者に対しても被爆者健康手帳を交付すべきであるとしました。これは,当時の厚生省が主張していた,適法な居住関係のないものに手帳を出すべきでないということを退けた判決であることに留意していただきたいと考えています。
3 広島市がこれまでに実施してきた援護行政の実情と今後検討中の援護措置について説明していただきたいと思います。
広島市が被爆者行政の中で,従前の原爆2法の時代から法外援護として,法律に上乗せした援護措置を講じてこられたことについて言及してください。
また,現在,広島市が在外被爆者の渡日治療を進める施策をしようとしていることとの関係で,日本国から出国した在外被爆者への援護措置が継続される方向で,行政実務の手続上,ほとんど問題の生じないもの(たとえば,手当の支給決定期間内の支給継続など)があることを指摘していただきたいと思います。
4 被爆者健康手帳の未取得者の問題にも言及していただきたいと思います。
被爆者健康手帳を取得したことのある在外被爆者のほかに,被爆者健康手帳を取得したくとも取得できてこなかった被爆者が少なからず存在することについても対処できるような施策の必要性に言及していただきたいと考えています。
この点は,広島市が現在検討中の渡日治療の実施との関係で問題になると思います。
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