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最近のニュース(2003.4.28 UPDATE)
「原爆症認定を求める集団訴訟を支援する広島県民会議」の結成集会が二十六
日、広島市中区の市女性教育センターであった。全国で取り組む集団訴訟との連
絡調整や、被爆者相談窓口などの役割を果たす。
原告となる予定の被爆者約十人と弁護団、被爆者相談員ら計約九十人が出席し、
広島を訪問中の米国やブラジルの被爆者も駆け付けた。
世話人代表に選ばれた田村和之広島大教授は「(集団訴訟は)原爆被害がいか
なるものかを裁判で問い直す取り組みだ」と意義を語り、支援を求めた。
昨年五月胃がんで原爆症認定の申請をしたが却下され、今年一月異議を申し立
てた広島県加計町の農業重住澄夫さん(75)は「被爆の状況も体調も一人一人違う
のに、すべて同じ一言で却下する国の審査方法は納得がいかない」と話していた。
集団訴訟は、既に長崎などで今月十七日、七人が提訴した。広島は六月十二日
に提訴の予定。原告は三十人以上になる見込み。事務局は県被団協(金子一士理
事長)被爆者相談所に置く。電話082(545)7708。
韓国、米国、ブラジルの被爆者団体の幹部が二十四日、一層の援護充実を求め
て被爆地広島にそろった。日本政府が在外被爆者への健康管理手当などを支給す
ると決めてから四カ月余り。申請は日本国内に限られるため、渡日する被爆者は
急増。一方、高齢や病気の在外被爆者は「日本に行きたくても行けない」と訴え
る。幹部たちは、現地での手続きや治療が実現するよう求めている。(森田裕美)
◆まだ支給なし
元韓国原爆被害者協会会長の崔日出さん(70)はこの日、八十歳の姉ら三人とと
もに健康管理手当を申請するため、広島市役所を訪れた。
国が手当支給を決めて以降、市が受け付けた在外被爆者からの手当申請件数は
急増。一月十五件、二月六十五件、三月二百三十九件、そして今月は二十四日ま
でに三百二十八件。
崔さんは「みんな体の動くうちに行かなければと焦っている。それでも多くは
経済的、体力的に来日できない」とくぎをさす。「日本政府が同じ被爆者と認め
た。居住地がどこであれ申請や治療できるようにすべきだ」
実は、昨年末以来の申請者に、手当はまだ届いていない。政府が、海外送金方
法を明確に定めていないためだ。昨年以前にさかのぼって支払う分についても、
広島市は送金対象者約四百五十人の連絡先を地道に調べている段階である。
◆一転受け入れ
「この度は健診に来ていただくことになり、お世話になります」。米国原爆被
爆者協会(本部・サンフランシスコ)会長の友沢光男さん(73)は広島県医師会の
真田幸三会長に、お礼を述べた。だが、表情は複雑だ。
同医師会などは一九七七年から隔年で、米西海岸やハワイに医師団を派遣し、
被爆者健康診断を実施して来た。昨年から始まった国の在外被爆者支援策では、
健診事業は国が引き継ぐ形に。しかし、同医師会が健診を受託するため、在米被
爆者を広島の医師が診る点では何ら変化がない、という経緯をたどっている。
同協会は「渡日が前提の支援策全体に反対」との立場で、いったん健診団の受
け入れを拒否。その後、メンバーの強い希望で一転して受け入れ方針に変わった。
「会長(である私)が日本政府の支援策を認めてしまえば、本当に困っている
被爆者を救うことにならない」と友沢さん。広大な米国では健診会場にたどり着
くのも困難な被爆者も多い。「国の施策なら平等であるべきだ」と譲れない気持
ちは今もある。
◆訴訟しかない
「結局、訴訟しかない」。広島地裁に提訴している在ブラジル原爆被爆者協会
会長の森田隆さん(79)は声を落とす。空路で片道二十四時間以上とブラジルはは
るか遠い。
今回一緒に帰国した副会長の向井昭治さん(77)は機中で倒れ、広島市内の病院
に入院中。腎臓、肝臓の機能障害がある。
森田さんは今回、厚生労働省も訪問し、現地での手当申請や医療の実現を訴え
た。色よい返事はなかった。「国は手当支給以上のことはしない。苦しい思いを
している仲間を救うには、やはり新たな訴訟しかないのでしょうか」とつぶやく。
《在外被爆者への手当支給》昨年12月5日、在韓被爆者郭貴勲さんが被爆者援
護法に基づく健康管理手当の支払いを国に求めた訴訟で、大阪高裁は、郭さんの
訴えを認める判決を下した。国は上告を断念し、在外被爆者が日本国内で申請す
れば出国後も支給すると決めた。過去、出国により支給が打ち切られた被爆者に
も、公法上の時効5年以内の未払い分はさかのぼって支払う。
【写真説明】広島県医師会の真田会長(左から3人目)に支援を要請する友沢会
長(同4人目)と森田会長(左端)
原爆症認定集団提訴、広島は6月12日 '03/4/21 中国新聞
日本被団協が提唱している原爆症認定の集団訴訟弁護団の全国連絡会議が二
十日、広島市中区の広島YMCAであった。第二次提訴は東京、千葉、大阪で五月
二十七日、第三次提訴は広島、熊本で六月十二日と決めた。
各地の担当弁護士や、被爆者相談員ら計約五十人が出席。現段階での原告は、
第二次提訴で東京十七人、千葉一人、大阪四人の計二十二人。第三次は、広島十
数人、熊本七人の予定。
広島弁護団代表の佐々木猛也弁護士は「被爆者にとって最後の闘いになるだろ
う。本人の意向を積極的にくみ上げたい」と話していた。
訴訟希望者対象の説明会もあり、被爆者約百人が参加。二十六日には、支援組
織も発足する。
在外被爆者ら援護充実を 厚労相に要望 '03/4/18中国新聞
韓国、米国、ブラジルの被爆者団体の代表が十七日、坂口力厚生労働相を訪ね、
在外被爆者援護の充実を求める要望書を提出した=写真。被爆者健康手帳の取得
や各種手当の申請を、渡日の必要なく居住地で可能とするよう求めている。
韓国原爆被害者協会の李廣善会長、米国原爆被爆者協会(本部・サンフランシ
スコ)の友沢光男会長、在ブラジル原爆被爆者協会の森田隆会長ら六人が厚労省
を訪問。医療支援の充実も盛り込んだ要望書を受け取った坂口厚労相は「できる
限り検討する」と答えるにとどまった。
この後、一行と交渉した健康局の仁木壮総務課長も「海外での手続きは法的に
難しく、あくまで渡日が前提」と従来の見解を繰り返した。友沢会長は「支援が
人道的見地に立つものなら、高齢化する被爆者にとって負担の少ない居住地での
手続きを実現させてほしい」と要望していた。
一行は二十五日、広島市での支援者集会に参加する。
原爆症認定で初の集団提訴 被爆者7人 '03/4/18中国新聞
被爆による病気や後遺症があるのに原爆症認定申請を却下されたのは不当とし
て、札幌市、愛知県、長崎県在住の被爆者計七人が、国に却下処分の取り消しと
一人当たり約三百万円の損害賠償などを求める訴えを十七日、札幌、名古屋、長
崎各地裁に起こした。
日本被団協の呼び掛けを受けた原爆症認定をめぐる初の集団訴訟。今年六月ま
でに東京、千葉、広島、大阪各地裁に、その後大分、熊本の両地裁にも提訴する
見込みで、被団協は百人規模の集団訴訟を目指し「裁判を通じて被爆者行政の転
換を求める」としている。
提訴したのは、札幌地裁が安井晃一さん(78)=札幌市北区=ら三人、名古屋地
裁が甲斐昭さん(76)=愛知県知多市、長崎地裁が青山トシ子さん(74)=長崎県福
江市=ら三人の計七人。甲斐さんは、直接被爆せず、原爆投下直後に救護などで
爆心地に入った「入市被爆者」として認定を求める初のケースとなる。
訴えによると、安井さんら三人は一九四五年八月六日、広島市皆実町(現・南
区)の旧陸軍船舶通信隊補充隊で兵役中に被爆。甲斐さんは海軍潜水学校の生徒
として、原爆投下直後の爆心地付近で救護活動などを実施した。青山さんら三人
は同年八月九日、それぞれ爆心地から〇・五〜四キロの長崎市で被爆した。
その後、七人は白血球減少やがん、被爆時の傷の後遺症などに悩まされ、現在
も通院や治療を続けている。被爆者援護法に基づき、二〇〇二年までに原爆症認
定を申請したが、いずれも却下された。
国は原爆症の認定基準を、爆心地からの距離を基にした「被曝(ばく)線量推
定方式」(DS86)としていたが、機械的な運用に疑問を呈した二〇〇〇年の
「松谷訴訟」最高裁判決を受け、翌年同方式に年齢や性別も加えた「原因確率論」
を導入した。
これに対し、原告側は「原因確率論でも、松谷訴訟の原告らは原爆症認定され
ず、導入は制度改悪。認定制度は被爆者切り捨て」と主張している。
厚生労働省によると、二〇〇二年三月末で被爆者手帳の所有者は全国で二十八
万五千六百二十人。うち原爆症認定を受けたのは二千百六十九人にとどまってい
る。
▽広島からも十数人が6月提訴予定
二つの広島県被団協などによると、広島では六月上旬、十数人が広島地裁に提
訴する予定。すでに広島弁護団(二十五人)が結成されている。二十日に市内で
全国弁護団連絡会議があり、提訴日など具体的な日程が決まる見通しである。
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