去る二月十三日に、東京の衆議院第一議員会館第四会議室で「在外被爆者援護のための議員説明懇談会」が開催されました。国会議員に在外被爆者の生の声を聞いてもらい、国会において在外被爆者援護問題を解決するための継続的な取り組みをしてもらいたいとの思いから、韓国原爆被害者協会、米国原爆被爆者協会、在ブラジル原爆被爆者協会、日本原水爆被害者団体協議会、在韓被爆者問題市民会議、市民の会の共同で、開催に向けて準備を進めてきたものです。
「議員説明懇談会」なるものは初の試みでした。韓国協会から李鳳儀会長、被爆者援護法裁判原告の郭貴勲さんと李康寧さん、米国協会からは友沢光男さん、ブラジル協会からは森田隆会長と森田綾子事務局長が、遠路はるばる参加されました。また、日本側は、日本被団協からは藤平典代表委員、田中煕巳事務局長、山本英典事務局次長をはじめとする東京の被爆者たち、市民会議のメンバー、市民の会からは市場さんと公司と会員の方々、郭さん裁判の金井塚弁護士が参加しました。
いっぽう、国会議員は、公明党の斉藤鉄夫さん(衆)、民主党の今井澄さん(参)、葉山峻さん(参)、家西悟さん(衆)、金田誠一さん(衆)、田中甲さん(衆)、社民党の中川智子さん、金子哲夫さん、阿部知子さん、大島令子さん(いずれも衆)、共産党の瀬古由起子さん(衆)、合計二名の参加がありました。
まずは、今回参加したすべての被爆者団体を代表して、日本被団協の藤平さんがあいさつをされ、市場さんが資料説明をした後、在外被爆者六名から、「在外被爆者には、法が何も適用されず、医療面でも健康管理面でも大変苦労している」と報告があり、海外に居住しているだけで「被爆者としての構利」をはく奪されていることへの怒りが表明されました。さらに、韓国の被爆者三人からは、日本が起した侵略戦争の犠牲として自らの原爆被爆があり、そのことに対して何の責任も取ろうとしない日本政府への怒りも表明されました。その上で、「二○世紀に起きたことは二○世紀中に解決を」と訴えられました。
つづいて、出席議員から在外被爆者問題について、「わざわざ日本に来て被爆者援護法の適用を受けても、帰国したら打ち切られることも問題だし、日本に来たくても来られない多くの在外被爆者のことも考える必要がある」との認識が述べられ、「今後は議員懇談会のような形で継続的にこの問題に取り組んでいきましよう」と、議員相互の呼びかけがなされました。それらの意見を代表する形で、広島選出の斉藤議員が「孫振斗最高裁判決の『(被爆者の法には)国家補償的配慮がある』ということと、被爆者援護法の前文にある『原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため』という法の趣旨からも、在外被爆者へ国は手を差し延べなければならない。自民党議員にも呼びかけて超党派の議員懇談会を作りたい」と強調され、同じく広島選出の金子議員からも「実現のためにあらゆる努力をする」と述べられました。そして、会の最後に、市民会議代表の中島竜美さんが、まとめという形で「日本政府の被爆者行政の根本問題は、被爆者が自己申告して初めて、被爆者であると認められることである」と、問題提起をされました。
市民の会では、在外被爆者間題に関する資料や、郭さんと李さんの裁判支援のカンバ要請の用紙などを参加者に配布してきました。また、この日にあわせて発刊した被爆者援護法裁判パンフレット『被爆者が被爆者でなくされるとき』を会場で販売し、多くの売り上げがありました。